稚内GN制覇4回
□キング・ラインとは何か
 2005年5月12日、飴田光男鳩舎が飴田稚内キングVで稚内GN総合優勝した瞬間、それは釜山ファーストレディ(97年釜山総合優勝)→稚内キングVという2代連続総合優勝を成し遂げた瞬間でもあった。
 北陸鳩界ではレースすなわちGNという考え方が支配的で、飴田もまたその一人。83年に愛鳩の友社のGCHを手にした飴田稚内タフ号は、実に7回の稚内帰還を果たしている。同じ地区のある後輩は、7回目の稚内フライトを見届けた飴田が「稚内っていいもんなんだ」といいながら感激に震えていたと証言する。だから、稚内GNを4回制覇したことは、北陸鳩界において、また飴田鳩舎にとって飴田稚内系が最高の高みに達したことを意味する。
 飴田稚内系は、キング・ライン、そしてレッド・ラインの2つのラインから形成されている。
 今回はキング・ラインを紹介しよう。
 源鳩は稚内キングと飴田35号。稚内キングは、91年に飴田鳩舎に最初の稚内GN総合優勝をもたらした。長距離といえども「帰れば勝てる」から「早く帰って勝つ」時代への変化を読み取り、飴田が輸入系のスピード性に注目して入れたファンリンデン「白夜の女王」のラインに、地元飛筋を掛けて生まれたトリだ。ところが、このトリは91年に勝ったあと、飴田の手で翌92年の同じGNに投じられ、二度と北陸の空に戻ることはなかった。
「初めて総合優勝はしたが、2年連続同一鳩でということがやりたくて。人と違うことをしなければトップには立てない」と飴田。同じ地区のある強豪が「こわい人だ」とつぶやいたのに対して、飴田は「落として、落として、それで勝っていくようになる。それが鳩だ」と言い放ったという。
□二度目のGN制覇
 幸いなことに、飴田の手には91年GN後に引いた、稚内キングと飴田35号の姉妹交配の直子4羽が残り、それがキング・ラインをさらに強化していく。
 2回目の稚内GN制覇となった、96年総合優勝の稚内キングUは飴田稚内キング、飴田35号のひ孫にあたる。
 実はその前年の95年、飴田は2回目のGN総合優勝をひそかにねらっていた。結果は総合5位と10位。「大いに不満でした」。
 そして、今年こそと臨んだ96年のシーズン。稚内キングによるGN初制覇からまる5年、1羽の栗が、放鳩翌日の朝5時前、トラップにふわりと降り立った。見た瞬間、飴田はあの栗だと確信した。参加した18羽中栗は1羽しかいなかったから、間違いなくGNに送り込んだ1羽だった。稚内キングUによる、飴田鳩舎2度目のGN制覇だった。
 キングUは、父方の布村作085に、レッド・ライン源鳩直子734栗のメスを掛けて生まれた。085は、稚内キングと飴田35号の姉×弟交配から生まれた4羽のうちの灰の557を布村氏にプレゼントした鳩の子である。
「子どもが生まれたら、お礼に好きな鳩を持っていっていいよ」と布村氏に言われ、布村宅に寄ったときに鳩舎をのぞくと、100羽を超えるヒナの中からすぐに灰胡麻のオスが目に止まった。「アッこれは、おれが作ったキング直子の子だとすぐわかりましたね」。そのオス、085を持って来て、734の栗のメスに掛けて誕生したのがキングUである。
□レッド・ラインとめぐりあう
 また、稚内キングの孫、キング・エース(95年地区N総合優勝)も代表種鳩として飴田に勝利をもたらし続けている。
 長距離重視の飴田にとって、どの距離でもまんべんなく入れることを要求する地区CH賞のシステムは、発想を根底から揺さぶるものだった。
「輸入鳩のもっと早いラインを持ってこない限り、地区CH賞はむずかしいなと感じましたね。いい系統ではなく、いいトリがほしい。キング・ラインの最大の特徴である帰巣性の強さにスピードを、と」
 そしてめぐりあったのが、87年Sのオスと、88年の栗のメス。この2羽が、レッド・ラインの源鳩となる。
 レッド・ラインは、Rg総合優勝、地区N総合優勝、会長賞、稚内GN総合優勝、下浜総合優勝、シルバーカップ総合優勝……とても書ききれないくらいだ。レッド・ラインについては次回に改めて書きたいと思う。
□35号こそナンバーワン
 そして、キング・ラインの飴田35号、「私にとっては、ナンバーワンの鳩だと思っています」と飴田は断言する。自身、稚内GNで3回入賞し、弟が91年稚内GN総合優勝(稚内キングU)など、これも書けばきりがない。「35号が生まれ、生後1ヶ月のときに、20年に1羽のトリだと思い、みんなにそういいました」
 (35号については別に項目を立てて書いているのでご覧ください)
→35号の記事を読む


 この記事を通して飴田稚内系を少しずつ理解してもらえれば、と思う。
(キングVについては愛鳩の友06年1月号掲載、キングWについてはこのページをごらん下さい)
  一度目は夢のごとく、二度目は歓喜にふるえ、三度目は血統の高みへ、そして四度目は黄金時代へ向けて。
 それが飴田稚内系の勝利の歴史なのである。

 ――みなさんのもう少しを、あと押しします―― 
飴田稚内キング
91年北陸稚内GN総合優勝
飴田稚内キングU
96年北陸稚内GN総合優勝
【UP↑】
飴田稚内キングV
05年北陸稚内GN総合優勝
飴田鳩舎トップ 稚内GN制覇4回 稚内GN優勝鳩 飴田稚内系
飴田稚内35号 代表活躍鳩 他鳩舎での活躍 分譲鳩